第七試合
栄えある決勝戦のリングに立ったのは藤原紀華と伊藤美咲の長身女優の両者だ。
『赤コーナー 171cm88-60-89 藤原紀華~』
女帝・紀華がトーナメント優勝の栄冠を勝ち取るべく、黒のパンツに赤のグローブで入場してきた。
『青コーナー 171cm83-60-87 伊藤美咲~』
初の主要タイトルを奪うべく美咲が白のパンツ、青のグローブで登場してきた。美咲は後一歩の所で、クイーンベルトを逃しただけにここでタイトルを獲りたい所。
気合を入れる両者。
『カーン』
紀華と美咲がグローブを合わせて試合が始まった。
両者共に疲労の色が濃く見るからに体が重たそうだが、これが最後の一戦。この試合に勝利すれば第二回K-1ビューティーマックスの優勝者になれるとあって気合いは入っている。
44歳の紀華はあまり試合を長引かせれないからと前に出てくると美咲も応えた。
バシ、バシ、バシィ、バシィ、
鋭いパンチを打ち合う両者。
クリーンヒットは無いものの長身女優同士の迫力のぶつかり合いに歓声が沸き起こる。
バシィ、
美咲の鋭いミドルキックが紀華のボディーにヒットすると一瞬動きが止まる紀華。
美咲は続けてミドルキックを連発していく。
バシィ、バシィ、
紀華:あぅぅぅぅ~~~、
美咲のキックでボディーを抉られて呻き声を上げる紀華。
バシィ、
しかし、紀華もカウンターの左フックを美咲の頬にヒットさせると美咲もふらついている。
バシィ、
紀華が重たいローキックを打つと嫌がる美咲。
紀華はキックの角度を上げてハイキックを放つと美咲は何とか避けるが、バランスを崩してスリップしてしまった。
一旦、試合が止まって息をつく両者。
『ファイト』
すぐに試合が再開されると美咲が気合いをいれて前に出て紀華の頬にパンチを打っていくと、紀華も応じて顔面の殴り合いになっていく。
バキ、バシィ、バシ、バキ、
紀華も美咲も頬を紅潮させながらも相手の顔面にパンチを打っていく。
美女同士の殴り合いに観客のボルテージも上がっていく。
バキィ、
紀華の右アッパーが美咲の顎を捉えると美咲はふらついている。
紀華は攻め込みにかかるが、美咲は懸命に前蹴りで蹴って紀華を近づけない。
美咲は徐々に落ち着きを取り戻すと前蹴りから紀華のボディーを狙うミドルキックに切り替えてきた。
バシィ、
“紀華ボディー”と謳われる強固な紀華のボディーだが、美咲はあえてそこを狙っていく。
紀華もボディーには自信があるようで、一発では崩れない。
バシィ、
紀華:うっ、
しかし、美咲のミドルキックがもう一発紀華のボディーにヒットすると息を詰まらせる紀華。
ボシュ、
美咲が前に出て攻め込もうとするが、紀華がカウンターのミドルキックで美咲を打っていった。
強力な紀華のミドルキックに準決勝で酷使された美咲のボディーは悲鳴を上げているようで、蹲りそうになっている。
『カーン』
更に攻め込もうとした紀華だったが、ゴングが鳴り美咲には恵みの鐘となった。
美咲はその場で蹲りそうになったが、持ち直すと自陣コーナーへ戻った。
余程ダメージがあったのか美咲は口をパクパクさせて喘ぐ様子も見せている。
一方の紀華も連戦によるダメージの蓄積は44歳のベテランには辛く汗を全身から吹き出していてセコンドに拭いてもらっている。
『カーン』
少しはリフレッシュした両者がリング中央に戻ってくると2ラウンド開始のゴングが鳴らされた。
落ち着いて試合に入る両者。
静かな展開になるが、緊張感がありいつ激しい展開に変わっても不思議ではない。
ジャブで探る紀華に対して前蹴りで距離を取りながらタイミングを計る美咲。
美咲が一気にハイキックを打っていくが、これは紀華に避けられて空振りに終わる。
紀華は空振りの後で体勢が不安定な美咲にローキックを浴びせていくと美咲はお尻を着いて倒れるが、これは又してもスリップと判定されレフリーは美咲にすぐに起き上がる様に指示した。
『ファイト』
美咲は蹴られた左足を少し気にしているが、ファイティングポーズをとって向かい合っている。
紀華は美咲との距離を詰めると一気に打ち合いに持っていく。
バシィ、バシィ、
美咲もパンチを返すが、紀華のパンチが2発顔面にヒットして瞼を腫らして視界が悪くなる。
バキィィ、
紀華がハイキックを打っていくと反応が遅れた美咲の側頭部にクリーンヒットした。
昏倒する美咲。決勝戦最初のダウンに盛り上がる観客。
強烈な一撃にこれで試合が決まるのではないかと思われたが、美咲はふらつきながらも立ち上がってファイティングポーズをとった。
美咲のガッツに観客は再び歓声を上げている。
『ファイト』
KOは奪えなかったものの依然チャンスと紀華は前に出て美咲の顔面にパンチを打っていこうとするが、美咲はパンチを防ごうと前蹴りで距離をとっている。
近付こうとする紀華と遠ざけようとする美咲。
距離があれば、紀華はパンチが打てずにイライラしているが、美咲は時間が経つにつれて体力を徐々に回復させてきた。
バシィ、
紀華:あぅぅ、
すると前蹴りと見せかけた美咲のミドルキックが紀華のボディーにヒットした。ガードしていなかった紀華はまともに喰らってしまい表情を歪めている。
今度は攻撃する番だと美咲が前に出て紀華のボディーにパンチを打っていく。
ドス、バン、
紀華のボディーが赤くなってきた。
ボシュ、
紀華:んん~~~、
美咲が止めとばかりに膝蹴りを打つと“紀華ボディー”を美咲の膝が打ち破り、紀華はマウスピースを吐き出してダウンした。
3連戦でいくら強固に鍛えたといってもやはり44歳、限界があり口から何かを吐き出しそうになりながら苦しみ紀華。
カウントが進むが、紀華はセコンドにマウスピースをはめ直してもらうとカウント8でファイティングポーズをとった。
『ファイト』
満身創痍になる紀華だが、試合は再開される。
構えを取る両者だが、紀華も美咲も疲れが見えてきて動きが少なくなっていく。
『カーン』
2ラウンドが終了した。
疲労困憊でフラフラになりながらコーナーに戻る両者。
両陣営はダメージの回復に努めるが、最早どの様な処置も焼け石に水といった感じで、回復には繋がらない。
両者は最終ラウンドに向けてリング中央に歩み寄った。
『カーン』
運命の3ラウンドの鐘が打ち鳴らされた。
全身から汗を吹き出し、痣だらけになっているが、後3分の激闘を制すれば、トロフィーを手に出来ると最後の力を振り絞って前に出る両者。
バシィ、バシィ、
激しく顔面にパンチを打ち合う両者だが、気力だけで立っている状態で、いつノックアウトを喫してもおかしくない。
バシィ、
紀華の左フックが美咲の頬にヒットすると血飛沫を上げてマウスピースを飛ばす美咲。
チャンスと見た紀華は距離を詰めてくるが、美咲もカウンターのボディーブローを紀華のボディーに撃ち込むと紀華も涎を垂らしながらマウスピースを落としている。
それでも両者はすぐに体勢を立て直すと文字通り歯を食い縛って殴り合っていく。
バシ、バシ、
顔にパンチを受けて口唇の流血が酷くなる美咲たが、拭う余裕もない。
美女2人が顔を殴り合う展開にヒートアップする観客。
バキィ
紀華の渾身の右ストレートが美咲の顔面にめり込む様にヒットすると目を虚ろにさせながらフラつく美咲。
紀華は
もう1発パンチを打とうとするが、美咲は紀華に倒れ込むようにクリンチした。
美咲:ハアハアハアハア、
観客席からも美咲の荒い息遣いが聞こえてきて、戦いの激しさを物語っている。
『ファイト』
試合が再開されると紀華の方が前に出てきてパンチを美咲の顔面に浴びせていくと美咲はガードを固めて耐える展開になっていく。
バシ、バシ、
美咲をサンドバックにしていく紀華。
しかし、紀華も息が上がっており強いパンチを打てない。
美咲はカウンターを仕掛けたいところだが、体力の限界に達していて体が動かない。
『カーン』
試合終了を告げるゴングか鳴らされた。
フラフラになって立っていられない両者。
優勝トロフィーの行方は今大会3度目の判定に委ねられる事となった。
緊張した面持ちで審判を待つ紀華と美咲。
いよいよ運命の判定結果が発表される。
『1人目 28-26 赤、藤原紀華』
『2人目 28-27 赤、藤原紀華』
『3人目 28-26 赤、藤原紀華』
紀華の基に駆け付ける紀華陣営のセコンド。
紀華を中心に歓喜の輪が出来上がる。
『よって第二回K-1ビューティーマックス優勝者は藤原紀華!』
判定勝利が2回と苦難の末に勝ち取った優勝は格別の様で、感涙の涙を流している。
紀華が高々と優勝トロフィーを掲げると場内から大声援が沸き起こる。
一方、惜しくも準優勝となった美咲は自陣コーナーに座り込んで、悔しそうな表情を浮かべるもやりきったという満足感もある敗戦となった。
こうして第二回K-1ビューティーマックスは藤原紀華の感涙の優勝で幕を閉じた。