3勝2敗と女チームが王手をかけて迎えた第6戦は藤原紀華がプロレスルールのリングに上がる事となった。
女チームとしてもここに紀華を起用する事が出来る豪華メンバーで、是非とも大ベテランとはいえ、地下リングの女帝と言われた紀華で勝負を決めたいところだ。
『赤コーナー 180cm85kg 黒服F~』
黒服は黒のパンツで出てきた。
男チームも第6試合にも筋骨隆々の大男を起用出来るようだ。
『青コーナー 171cm 88-60-89 藤原紀華~』
紀華も黒のパンツで登場してきた。
50歳を迎える紀華だが、30歳前後の男相手に戦うとなっても堂々と対峙している。
紀華:坊っちゃんも良い体してるわね。私が存分に可愛がってあげるわ。
紀華は貫禄を見せると黒服を見下した態度をとっている。
これには黒服もムッとした様子を見せると場内も空気を感じ取ったのか試合前からヒートアップしている。
『カーン』
ゴングが鳴ると紀華は指をクイッとさせて誘っている。
黒服も紀華の挑発に乗ったと前に出ると両者は組み合った。
リング中央で取っ組み合いになる紀華と黒服。
女優随一の鍛え上げられた肉体を持つ紀華は男相手にもパワー勝負では負けないという自負があるが、屈強な肉体を保持する男の黒服もそう簡単には譲らず白熱した力比べになっている。
試合開始早々からの男と女のフィジカルバトルに観客は盛り上がっている。
長時間の力比べとなるが、時間が経つとサイズに勝る黒服が徐々に押していく。
紀華としては試合開始前に啖呵を切った事もあり、力比べでは易々とは負けられないと焦っているが、いつの間にか体には大粒の汗をびっしょりとかいており、顔も歪んできて劣勢は否めない。
黒服がゆっくりと前に出ると紀華の背中がロープに押しつけられた。
『ロープ』
紀華:あああ~~~、
ロープブレイクとなり、力比べでの負けが確定すると紀華は悔しさを露にしている。
黒服は紀華を無理矢理リング中央に運ぶとブレーンバスターの体勢に入った。
肉体に充実感を漂わせる黒服に対して、紀華は先程の力比べでパワーを使い切ってしまった感さえある。
黒服は容易に紀華の体をリフトアップすると勢いよく叩きつけていった。
バターン、
ぐったりと大の字に倒れる紀華。
黒服はフォールに入った。
『ワン、ツー、スリ、、』
ギリギリのところでブリッジで返す紀華だが、表情には余裕が無くなっている。
黒服は紀華の髪の毛を掴んで、起き上がらせるとベアバックをかけていった。
紀華はダメージがあるところに更に体を絞られて険しい表情になっている。
黒服:女帝・藤原紀華も男相手には敵わないようだな。
紀華:(ぐっ、これが男の力、、)
場内では紀華がまだ1発も黒服にダメージを与えれておらず、まさかの「完封負け」を喫するのではないかという声が上がっている。
その声は紀華の耳にも入ってきており、プライドを傷つけられた紀華は意地を見せようと黒服の股間を蹴り上げた。
ボシュ、
黒服:ハウッ、
黒服は怯んで股間を押さえて踞ると紀華は素早く背後に回り込んだ。
紀華:この技に全てを賭けるわよ。オリャャャーーー!
紀華は叫ぶと鮮やかな弧を描いてジャーマンスープレックスホールドを放った。
バターン、
後頭部からリングに叩きつけられる黒服。
紀華の両腕がガッチリと黒服の体をホールドして美しいブリッジで決めている。
『ワン、ツー、』
起死回生の大技・ジャーマンスープレックスホールドに場内は盛り上がっているが、カウント2で返されてしまった。
50歳にもなる体で30歳前後の大男と戦う紀華の体は激しく消耗しており、ボロボロになっていた。
紀華が立ち上がるまでに時間がかかると黒服も後頭部をリングに打ちつけられてダメージを追っているが、起き上がってきた。
両者は向かい合うと紀華は組み付いて勝負しようと考えているが、黒服が機先を制してラリアットを紀華の胸元に打ち込んでいった。
バシィ、
大の字に力無く倒れる紀華。
黒服もさっきのジャーマンスープレックスホールドは紀華が最後の力を振り絞って繰り出した技である事は悟っている。
黒服は紀華の体をうつ伏せにさせるとロメロスペシャルをかけていった。
紀華の鍛え上げられた肉体は若い大男には敵わず、ただの見せ物となっている。
観客も50歳の紀華の開脚に興奮して場内は盛り上がっている。
紀華は自らの無力感から悔しさで涙を流すが、黒服は観客が歓声を上げるので、引き続きロメロスペシャルを解かない。
すると、リング下の主催者は功労者である紀華を下品な技で決着を着けさせてはならないと考え、相応しい技で勝負を決めるように指示を出した。
黒服は指示に従い、紀華を解放するとコブラツイストをかけていった。
黒服の筋骨隆々の男の体が紀華を締め上げていくと紀華のボディには相当な負荷がかかっている。
黒服は紀華がすぐにタップすると思っていたが、紀華は苦悶の表情になりながらも粘っている。
黒服:おい、タップしろよ。体がおかしくなっちまうぞ。
紀華:見くびるんじゃないわよ。この私がタップしろと言われてタップするわけ無いわ。
肉体が限界に近づいているにもかかわらず、永年地下リングを引っ張ってきた女帝としての矜持を見せようと精神力で補って耐える姿に観客は驚嘆している。
黒服:恐れ入りました。それではこの技で決めます。
紀華:好きにしなさい。
黒服も観客と同じく紀華の精神力に感服したようで、そう言うと技を解いて紀華を掴まえ直すとパワーボムの体勢に入った。
黒服は紀華を軽々リフトアップすると勢いよくリングに叩きつけた。
バター-ン、
黒服はそのままフォールに入った。
『ワン、ツー、スリー!カーンカーンカーン』
カウント3が入ると紀華は精根尽き果ててピクリとも動かない。
『勝者:黒服F』
勝利した黒服は控え目に喜ぶと敗れた紀華を気遣っている。
紀華は首筋に氷嚢を当てられて一切動く事は出来ないが、この戦いに全力を尽くした偉大な敗者に場内からは称える拍手が送られている。
しかし、これで星取は3勝3敗となり、賜杯の行方は最終戦の青樹愛に委ねられた。