K-1ベルトの2代目女王の藤原紀華が初めての防衛戦を行う。
対戦相手は肩瀬那奈でタイトルマッチという事もあり気合いが入っている。
紀華としては最初の防衛戦からいきなり難敵が登場してきたが、4度の防衛で成し得る殿堂入りへ向けて幸先良くスタートを切りたいところ。
既に超満員になっている会場は両者の登場を待つのみとなった。
『青コーナー 172cm86-59-87 肩瀬那奈~』
那奈は青のパンツに青のグローブを着けて堂々と登場してきた。
相手が藤原紀華でも恐れる素振りは全く見せない。
『赤コーナー 171cm88-60-89 藤原紀華~』
紀華は黒のパンツに赤のグローブでチャンピオンベルトを肩にかけてリングへ向かう。
紀華が登場してきて会場の雰囲気も緊張に包まれる。
両者がリング中央に歩み寄ると試合の説明が行われている間も睨み合っている。
1ラウンド2回のダウン、若しくは試合を通して3回のダウンで勝負が決まる。
一旦自陣のコーナーに帰るとセコンドの指示を受けて再び向かい合った。
『カーン』
1ラウンド3分の3ラウンドで争われる試合が今、始まった。
開始早々からジャブを打って積極的な攻めを見せる紀華と那奈。
女王・紀華は40歳を越える年齢という事もあり早目に勝負を決めようと前に出てきた。
那奈も応じると激しい撃ち合いになる。
バキィ、バキィ、バシィ、バシィ、
バンチとキックが乱れ交うと紀華のパンチが先に那奈の顎を捉えた。
ふらつく那奈。紀華はチャンスと見て攻め込んでいくと那奈はガードを固めて守る厳しい展開となっていく。
バシィ、
しかし、那奈のカウンターパンチが紀華の頬を捉えると紀華は目を虚ろにさせながらもダウンは避けようと必死に那奈に抱きついてクリンチした。
一旦、試合が止まるが、互いの攻撃力に驚く両者。
『ファイト』
試合が再開されるが、今度は一転して互いにガードを固めて慎重に試合を進める両者。
膠着状態の中でも紀華は時折ローキックを打って活路を見出だそうとするも那奈が上手くガードするので、ローキックも有効な攻撃にはならない。
那奈もガードするので精一杯で攻撃には力を入れて無いので、次第に互いに手数も減っていく。
長身女優同士の派手な撃ち合いを期待していた観客は不満を漏らし始める。
観客A:どうなってんだ!もっと撃ち合えー
観客B:高い金払ってんだぞー、金返せー
観客の罵声に忸怩たる思いで試合を進める紀華と那奈。
『カーン』
大ブーイングの中、1ラウンドが終了した。
紀華と那奈はセコンドに戻るが、そこには黒服が待ち構えていた。
どうやら不甲斐ない試合内容を叱責しているようだ。
地下リングの女帝・紀華は黒服に言い返している様で、言い合いになっている。紀華としては試合内容にケチを付けられたのが余程気に入らなかったらしく激怒している。
『カーン』
2ラウンドが始まった。
インターバルでの黒服の檄が効いたのか紀華と那奈は積極的に前に出て撃ち合いに臨んでいく。
バシィ、バシィ、バシィ、バキィ、
主に紀華は重たいパンチで、那奈は切れ味鋭いキックで攻めていく。
ボシュ、
那奈:うげぇ、
紀華が不意に打ったミドルキックが那奈の脇腹にヒットすると動きが止まる那奈。
那奈はパンチが来ると思い、ガードするが、ミドルキックが来たのでガードし切れなかった。
チャンスと見て攻め込んでいく紀華。
那奈はガードを固めようとするが、パンチかキックか分からずに絞れない。
バシィ、バキィ、バシィ、
いつの間にかコーナーに追い込まれてサンドバックにされていく那奈。
紀華のラッシュに那奈は顔を腫らして目が虚ろになって来た。
レフリー:ダウン!
レフリーはまだ倒れていないが、那奈が危険な状態に追い込まれているので、スタンディングダウンをとった。
カウントが取られるが、那奈はカウント8のところで何とかファイティングポーズをとった。
観客からは豪快な撃ち合いに対する歓声とファイティングポーズをとった那奈に対する拍手が送られる。
『ファイト』
紀華は一気に攻めようと再び那奈をコーナーに追い詰めてパンチを打っていく。
バシィ、バシィ、
必死にガードを固める那奈だが、紀華のパンチに頬を叩かれて苦しい那奈。
バシィ、
紀華:うぅぅぅ~、
攻撃一辺倒になる紀華に那奈のカウンターのミドルキックがヒットすると動きが止まる紀華。
那奈はここから反撃したいところだが、ダメージが大きく攻めれない。
両者共に動きが少なくなってきたところで2ラウンドが終了した。
『カーン』
那奈は頬を赤くしてよろめきながら自陣コーナーに戻った。紀華も蹴られたボディーを気にしながらコーナーに帰っていった。
両者、疲労困憊しながらも3ラウンドに備えて呼吸を整えている。
那奈はダメージが大きいようでセコンドも懸命にマッサージをしてサポートしている。
『カーン』
運命の3ラウンドが始まった。
紀華はKO勝利を狙って前に出てくる。
那奈はガードを固めて守ると1発逆転のカウンターを狙っている。
バシ、バシ、
攻める紀華、守る那奈。
紀華は那奈の顔面に強烈な打撃を浴びせるが、那奈がしっかり守っているので、有効打は打たせない。
ボシュ、
しかし、ここでボディーに切り替えた紀華のパンチが那奈のお腹を抉った。
一瞬呼吸が止まる那奈。
紀華は那奈のボディーにラッシュをかけていく。
ボシュ、ボシュ、
那奈:んんん、~~~~
重量戦車の紀華のパンチが続けざまにヒッとすると那奈は崩れ落ちた。
ダウンする那奈は口をパクパクさせて苦しんでいるが、必死に起き上がろうと頑張っている。
起き上がろうとする那奈に声援が送られると那奈は声援をパワーに起き上がってファイティングポーズをとった。
場内には大歓声が沸き起こる。
『ファイト』
試合が再開されるとボロボロの那奈に襲いかかる紀華。
紀華は那奈のボディーをロックオンしている。
ボシュ、ボシュ、
那奈のスレンダーなボディーにめり込むようにヒットする紀華のボディーブロー。
ボシュ、
那奈:あぅぅぅ~~~、
紀華のパンチがヒッとするとマウスピースを吐き出す那奈。
那奈はコーナーを背にして追い詰められている。
ボシュ、
那奈:んんん~~~、
那奈はボディーを青紫色にさせながら悲鳴を上げて悶絶しているが、もうダウンするわけにはいかないからと意地で踏ん張っている。
『カーン』
ここでノックアウトではなく3ラウンド終了を告げるゴングが鳴った。
紀華の猛攻を耐えきった那奈は安堵からか崩れ落ちた。
一方の紀華はKO勝ちも狙えただけに悔しさを露にしている。
勝敗は明白だが、一応判定が行われる。
「1人目 30―25 赤、藤原紀華」
「2人目 30―26 赤、藤原紀華」
「3人目 30―25 赤、藤原紀華」
『よって、勝者:藤原紀華』
紀華は軽く手を上げて声援に応えると敗れた那奈の背中を叩いてリングを後にした。
1度目の防衛を果たした紀華だが、KO勝ち出来なかった事に不満があるようで、派手にガッツポーズをすることなくリングを去った。