『香理奈、1年間アメリカへ!』
突然、駆け巡ったこのニュースは日本とアメリカに地下リングを騒がせた。
発起人はアメリカの地下プロレスの主催者・ミズティーブルーで「香理奈は日本の地下プロレスでは十分に才能を発揮できていない」と主張。
日本の地下プロレスの主催者もドル箱カードになりつつある香理奈の流出には真っ向から反論するもミズティーブルーの魅力的な条件に香理奈も靡きアメリカへ行く運びとなった。
但し、香理奈も慣れ親しんだ日本から長期間離れたく無いと考え1年契約でアメリカのリングで戦う事となった。
《日本の地下プロレスの主催者の部屋》
香理奈、ミズティーブルーと主催者の3人が条件面で話し合っている。
ミズティーブルー:それじゃあ香理奈は1年間私のリングで預かるわね。
主催者:うむ、香理奈の希望とあってはやむを得ない。
ミズティーブルー:本当はもっと長い間欲しかったんだけどね。
主催者:それはならん。必ず1年で返してもらう。
ミズティーブルー:そうは言っても日本のちっぽけなリングじゃ、香理奈は活躍出来ないわよ。香理奈の良さが出るのは『K-1』と『アルティメットバトル』よ。プロレスなんてやらせる事無いわ。
主催者:それは興行の関係上仕方ない。プロレスの大会があれば香理奈にもそちらに出て貰う。
ミズティーブルー:それが無駄なのよ。アメリカじゃ、ちゃんと幾つも大会があるから得意な種目に専念してもらうわ。
香理奈:それが一番いいわね。
ミズティーブルー:じゃあ、ずっとアメリカにいる?
香理奈:う~ん、でも女優業は日本でやるし、友達も日本にいるから1年間行ってそれからは偶にアメリカに旅行に行くくらいがいいかな。
ミズティーブルー:香理奈が言うなら仕方ないわね。
香理奈の案に妥協するミズティーブルー。
こうして香理奈は1年間アメリカのミズティーブルーのリングで戦う事となった。
《ニューヨーク地下リング》
今までも短期的にニューヨークのリングを訪れた事はあっても継続的に参戦した事は無かった香理奈だが、期待に胸を膨らませている。
ブルー:私のリングでは得意な種目で思いっきり戦って貰うわ。報酬も弾むわよ。
ブルーに言われた様にニューヨークには豪華なプール付きの家が用意され、トレーニングジムも自由に使えるし、リングに上がる事と遊ぶ事に専念出来る環境が整った。
又、リングではエキシビジョンマッチには出ずに戦う試合はすべて公式戦となった。
出場する試合は『K-1リーグ』『アルティメットバトルリーグ』『K-1グランプリ』『アルティメットバトルグランプリ』『K-1ベルト』『アルティメットバトルベルト』となった。
出場する大会は多いものの得意な競技で他の女優とは違って競技に専念できるとあって快進撃を続ける香理奈。
ミズティーブルーにプロデュースされたとあってブルーのパンツにブルーのネイルでニューヨークのリングを席巻する香理奈。
以下がアメリカでの香理奈の戦績である。
K-1リーグ(第一シーズン):18勝2敗 優勝
アルティメットバトルリーグ(第一シーズン):9勝1敗 優勝
K-1リーグ(第二シーズン):16勝4敗 優勝
アルティメットバトルリーグ(第二シーズン):7勝3敗 3位
K-1リーグ(第三シーズン):18勝2敗 優勝
アルティメットバトルリーグ(第三シーズン):8勝2敗 優勝
K-1リーグ(第四シーズン):20勝0敗 優勝
アルティメットバトルリーグ(第四シーズン):10勝0敗 優勝
K-1リーグ(第五シーズン):20勝0敗 優勝
アルティメットバトルリーグ(第五シーズン):10勝0敗 優勝
K-1グランプリ:6勝0敗 優勝
アルティメットバトルグランプリ:5勝0敗 優勝
K-1ベルト:7度防衛 8勝1敗
アルティメットバトルベルト:4度防衛 5勝1敗
K-1カップ戦春:1敗
K-1カップ戦夏:3勝0敗 優勝
アルティメットバトルカップ戦夏:1勝1敗ベスト4
K-1カップ戦秋:1敗
K-1カップ戦冬:1勝1敗 ベスト4
アルティメットバトルカップ戦冬:1敗
通算:K-1 110勝12敗(93KO) アルティメットバトル 55勝9敗
カップ戦こそ満足のいく結果が残せなかったもののリーグ戦、グランプリと素晴らしい戦績で期待に応えた香理奈。
数々のトロフィーを手に日本へ戻る事となった。
ブルー:サンキューベリーマッチ、香理奈。おかげで興行が盛り上がって収入も上がったわ。日本でも成功を祈ってるわよ。
香理奈:ありがとう、ブルー。それじゃあまたね。
香理奈とブルーにとってはwin-winに終わった1年間だった。
香理奈が日本に帰ってきて程なくすると主催者より招集レターが届いた。
『名古屋決戦、香理奈VS竹井咲』
エキシビジョンマッチでルールはプロレスルールだ。
久しぶりの日本での試合は香理奈の地元で行えるとあって気合いが入っている。
《試合当日》
名古屋の会場は久しぶりに香理奈の試合を見れるとあってエキジビションマッチの1試合であるにもかかわらず超満員に膨れ上がっている。
『赤コーナー 163㎝ 竹井咲~』
『青コーナー 165㎝ 香理奈~』
30歳香理奈と20歳の咲の対決。様々な経験を積んで今がピークの香理奈とこれから頂上を獲ろうとする咲の対決。
香理奈は黒、咲は白のビキニで既に臨戦態勢に入っている。
『カーン』
今ゴングが打ち鳴らされた。
咲は動き回って攻撃の機会を窺うが、香理奈はリング中央でどっしりと構えている。
香理奈は力比べを誘っている。
咲は正面からの衝突は避けたいところだが、他に選択肢が無いためやむを得ず力比べに乗った。
指と指を絡ませ合う両者。
しっかりと組み合うとその瞬間に力を入れていく香理奈と咲。
力比べの勝負はあっさりと着いた。
香理奈のパワーに押されて咲は瞬く間に背中をロープに押し付けられた。
クリーンに離れる香理奈。咲は香理奈のパワーに驚いている。
咲は香理奈のパワーを警戒して距離を置いて戦おうとするが、これが逆効果で香理奈の得意のキックが出しやすくなってしまった。
香理奈はキックで咲を攻めると徐々にコーナーに追い込んでいく。
咲もガードからカウンターを狙っていくが、香理奈のパワーに押されてガードするのが精一杯だ。
バキィィ、
香理奈がキックの角度を上げると咲の側頭部にヒットした。
崩れ落ちた咲を危険だと判断したレフリーは一旦試合を止めて咲の状態を確認している。
やや目が虚ろになっている咲だが、水を飲んでインターバルをとると回復してファイティングポーズをとった。
『ファイト』
レフリーが試合を再開させると咲は奇策に出た。
スタンディングでは敵わないと判断した咲は仰向けに寝転がってグランドで勝負に出た。
香理奈はスタンピングを落として咲を痛めつけにかかる。
ドス、ドス、
予想された攻撃とはいえ苦悶の表情を浮かべる咲。
しかし、咲には狡猾な狙いがあった。
咲は踏みつけられながらも香理奈の右脚を掴んだ。
香理奈は踏ん張ろうとするが、咲がガッチリ右脚を掴んでいるので倒れるのは時間の問題だった。
敢え無く咲に倒される香理奈。
狙い通り香理奈を倒した咲は香理奈の脚をクラッチして極めていく。
香理奈:ああぁぁぁ~~~、
咲のクラッチが完璧に極まってリング中央で悲鳴を上げる香理奈。
咲は香理奈との一戦とあってこの関節技を練習してきた様で、高い完成度を見せている。
一方の香理奈は1年間アメリカでK-1アルティメットバトルしか戦ってない事もあって久しぶりのグランド勝負に苦戦を強いられている。
香理奈:ああぁあぁ~~、
悲鳴を上げる香理奈だが、何とかロープに辿り着いた。
肩で息をしている香理奈。
咲は先に立ち上がると香理奈の頭を抱えてDDTを落としていった。
ガン、
咲はフォールに入る。
『ワン、ツー、』
カウント2で返す香理奈。
両者起き上がると香理奈は流れを変えようとミドルキックを打っていくが、咲に捕まれてしまう。
咲はすかさずドラゴンスクリューで香理奈の右脚を捻っていった。
香理奈:うぅぅ~、
痛めていた右脚を捻られて悶絶する香理奈。
咲はロープに走って反動をつけると香理奈にスライディングキックを打ち込んだ。
バシィ、
顔面を撃たれて仰向けに倒れる香理奈。
咲はコーナーによじ登ると余裕が出てきたのか観客に手を振ってアピールしている。
咲は狙いを定めるとボディープレスを放った。
ボシュ、
咲:あううぅぅ~、
とそこには香理奈の膝が待っていた。
お腹を抱えて悶絶する咲。
香理奈:調子に乗るんじゃないわよ。
香理奈は倒れ込んだ咲の髪の毛を掴んで起き上がらせるとブレーンバスターで投げつけていった。」
バターン、
背中に今まで受けたことが無い衝撃を受ける咲。
とりあえず香理奈はフォールに入った。
『ワン、ツー、ス』
カウント2で肩を上げる咲だが、顔は泣きそうになっている。
香理奈は咲の体勢を変えて両脚を掴むとステップオーバーしてエビ固めをかけていった。
咲:あああぁっぁ~~~、
香理奈がどっしりと腰を落とすと悲鳴を上げる咲。
香理奈:さっきのお返しよ。
香理奈はがグイグイ両脚を引っ張って腰を落として体重をかけていくと咲の体は悲鳴を上げている。
額から汗が滴り落ちる咲。
少しずつは前進しているが、ロープはまだ遠い。
徐々に動きが少なくなっていく咲。
香理奈は勝利を確信したのか自ら技を解くと咲を起き上がらせてブレーンバスターで背中を叩きつけていった。
バターーン、
咲の体がバウンドする程の威力で一瞬呼吸が止まりそうになる。
咲はぐったりしているが、香理奈はまだフォールに入らない。
手を上げて観客にアピールするとパワーボムの体勢に入った。
咲は踏ん張ろうとするが、体に力が入らない。
香理奈は高々と咲をリフトアップすると咲をリングに叩きつけた。
バターーン、
白目を剥いて失神する咲。
香理奈はそのままフォールに入った。
『ワン、ツー、スリー!』
カウント3が悠々と入った。
グッタリと倒れる咲にもう力は残っていない。
『勝者:香理奈』
香理奈はコールされるとゆっくりと立ち上がって観客の声援に応えている。
凱旋試合で勝利した香理奈は手応えを掴んだ様で、これからの日本での試合に向けて弾みを着けた。
敗れた咲は及ばなかったものの一時は香理奈を苦しめて見せ場は作った。
香理奈は去り際に咲に手を差し伸べる余裕を見せてリングを去った。