30分のインターバルを経て、第8回アルティメットバトルトロフィーの優勝者を決めるKー1でのワンマッチが行われる。
30分の待ち時間も観客にとっては短く感じた様で、場内は熱気を帯びたままいよいよ選手再入場の時を迎えた。
『只今より、第8回アルティメットバトルトロフィーの賜杯の行方を決めるKー1でのワンマッチを行います。尚、このKー1の試合はワンマッチ扱いとし、香理奈が勝てば、1試合目を、愛が勝てば、2試合目を採用して第8回アルティメットバトルトロフィーの優勝者とします。』
場内アナウンスが流れると観客は優勝者を決める為の事務的な手続きには興味はなく、純粋にどちらが強いのかを楽しみにしている。
『赤コーナー 173cm 85-60-83 青樹愛~』
愛は白のパンツに青のグローブで出てきた。
『青コーナー 165cm 80-58-88 香理奈~』
香理奈は青のパンツに青のグローブで再び登場してきた。
両者共にインターバルから戦いの舞台に戻ってきた。
その舞台はいつものKー1のリングではなく、アルティメットバトルの鉄格子の檻の中で行われる事となり、ラウンドインターバルは無しで、判定も無し。KO決着のみと追加の場内アナウンスで発表されると場内のボルテージも上がってきた。
『カーン』
ゴングが鳴ると大歓声の中、両者はグローブを突き合わせて試合が始まった。
ファイティングポーズをとる愛と香理奈。
愛は香理奈のプライドを砕こうと敢えてKー1での試合を希望したが、香理奈としては得意なKー1で試合が出来る事を歓迎している。
香理奈はハイキックで愛の側頭部を狙っていくが、愛は避けるとカウンターのパンチを香理奈の顔面にヒットさせた。
バシッ、
2試合目で勝利した愛の方が動きが良い様だ。
顔にパンチを喰らった香理奈は後退を余儀なくされると愛は追いかけて香理奈の顔面にパンチを打っていく。
バシ、バキ、
愛の猛攻に表情を歪める香理奈だが、何とか愛に抱き着いてクリンチで逃れた。
香理奈は早くも汗をびっしょりとかいている。
愛:もうスタミナ切れなの?体力無いわね。
『ファイト』
試合が再開されると愛は香理奈がスタミナ切れを起こしていると見て一気に攻め込もうと前に出てきた。
しかし、香理奈は読んでいた様で、狙いを定めると距離が詰まってきたところでハイキックを打っていった。
バキッ、
今度は香理奈のハイキックが愛の側頭部を捉えると愛はふらついている。
元々頭部にダメージを負っていた愛はしまったという表情を浮かべている。
香理奈はこの機に攻めたいところだが、疲労からか体が前に行かず、愛に体勢を立て直す時間を与えてしまった。
ファイティングポーズをとって向かい合う香理奈と愛。
インターバルがあったとはいえ両者共に激闘を2試合戦ったダメージは簡単には癒えず、疲労の色が濃く出ている。
香理奈は愛の頭にダメージを与えようと顔面を狙ってパンチを打っていくが、愛はガードして防いでいる。
香理奈はヒット出来なかったもののパンチを打って勢いが出てきたのかもう1発愛の顔面にパンチを打っていくと愛はガードは間に合ったものの、ガードの上からでも威力がある様で、表情を歪めている。
愛は攻撃しようと香理奈の顔面にパンチを打っていくが、香理奈は避けるとカウンターの右フックを愛の顔面にヒットさせた。
バキッ、
愛:あうぅぅ、
パンチを喰らって目を虚ろにさせてふらつく愛。
鍛え上げられた最強のボディをもってしても頭への攻撃は辛いのか愛は表情を険しくさせている。
香理奈は愛の顔面にパンチを連打してラッシュをかけていくと愛はロープ際まで追い込まれていく。
バシ、バシ、バシッ、
ガードを固めて耐える愛だが、香理奈のパンチを頭に受けて表情が蒼白くなるとまた透明の液体を吐き出して倒れ込んでしまった。
愛がダウンすると勝利を確信した拳を突き上げてアピールする香理奈。
愛は四つん這いになって嘔吐している。
レフリー:愛、続けれるか?
レフリーも愛の状態が心配になって愛に問いかけるが、愛は立ち上がった。
愛:やるに決まってるでしょ、私が負けるわけないわ!
愛はプライドを見せると立ち上がってファイティングポーズをとった。
最早限界かと思われた愛が立ち上がって場内は大歓声に包まれている。
『ファイト』
明らかに表情が蒼白くなって異常をきたしている愛だが、精神力で意識を繋ぎ止めると香理奈と向かい合っている。
香理奈は愛が立ち上がった事に驚いているが、一気に試合を決めれそうだからと前に出るとハイキックを打っていった。
しかし、読んでいた愛は避けるとカウンターのパンチを香理奈の顔面に打っていった。
バキッ、
カウンターパンチを喰らってふらつく香理奈。
愛の思わぬ反撃に盛り上がる場内。
香理奈も体力は限界に近付いており、表情が歪んでいる。
愛は気力を振り絞って前に出ると香理奈の顔面にパンチを打っていく。
バシ、バシッ、
ガードを固めて守りら香理奈だが、愛の強力なワンツーパンチに押されている。
愛はここで決めないと体が持たないからとラッシュをかけていくと香理奈も持ち直すと応戦して打ち合いになった。
バシッ、バキッ、バシィ、バキィ、
3試合目にして激しい打撃戦となって観客は総立ちになって大歓声を上げている。
顔面を殴り合う香理奈と愛。
愛のパンチに苦悶の表情を浮かべる香理奈だが、香理奈のパンチが愛の顔面を捉えると愛は目を虚ろにさせている。
壮絶な殴り合いを演じる愛と香理奈。
バシィ、バキィ、バシィ、
愛のパンチの方が威力がある様に見えるが、愛は頭に元々ダメージを負っているだけに香理奈のパンチがヒットする度に表情が歪んでいる。
頬が紅潮させる香理奈に対して、愛は逆に顔を青白くさせている。
観客も愛の顔色が明らかに悪いので、心配する声も上がっているが、試合は続けられていく。
バキィ、
愛:あぁぁ~~ん、
アスリート魂で耐えてきた愛だが、香理奈のアッパー気味のパンチがヒットすると可愛らしい女の子の様な悲鳴をあげている。
香理奈は動きが止まった愛の側頭部に狙いを定めるとハイキックを打っていった。
バキィィィ、
香理奈のハイキックが愛の側頭部にクリーンヒットする激闘に終止符を打つ衝撃音が場内に鳴り響いた。
失神して倒れる愛。
『カーンカーンカーン』
ゴングが鳴ると勝利した香理奈も思わず膝を着いている。
死闘がようやく終わると観客も拍手で両者を讃えている。
『勝者:香理奈、よって第8回アルティメットバトルトロフィー女王は香理奈!』
香理奈はしばらくしてから立ち上がるとコールを受けて優勝トロフィーを掲げた。
最強の相手・青樹愛に勝利してのタイトル獲得となった香理奈は充実した表情を見せている。
一方の敗れた愛はぐったりと倒れたまま起き上がれないが、意識は取り戻した様で、敗れた事を受け入れられずにグローブを叩いて悔しがっている。
対照的に歓喜の香理奈はボージングをとって勝利を観客にアビールしている。
リングには愛を運び出す為に黒服が担架を用意するが、愛は立ち上がると黒服が持ってきた担架を蹴り飛ばした。
愛:こんなものいらないわ!自分の脚で帰るわよ!
愛は激怒すると黒服と香理奈を睨みつけてから控え室へと戻っていった。
最後に意地を見せる愛。
香理奈は愛を見送ると激闘を経て掴んだ勝利の余韻に浸りながらリングを去った。