第9回目のアルティメットバトルトロフィーが行われる。
過酷なルール故にワンマッチで優勝者が決まる大会に出場するのは先日総合格闘技ベルトを獲得した稲邑亜美とKー1ベルト女王の蒼野楓だ。
フィジカルの強さが自慢の亜美と空手をバックボーンとした強力な打撃を誇る楓。
『赤コーナー 173cm 86-61-88 稲邑亜美~』
亜美は自慢の肉体をパンプアップさせて登場してきた。
地下リングの実績では上回る楓が相手だが、臆する様子は無い。
『青コーナー 169cm 82-58-86 蒼野楓~』
楓は黒髪を靡かせて青のネイルをして出てきた。
檻の中は2人になると試合開始のゴングが鳴った。
『カーン』
楓はフィジカル自慢の亜美のパワーがどんなものなのかを確かめようと敢えて力勝負を挑んでいる。
馬鹿にされたと感じた亜美は怒った様子で応じると指と指を絡み合わせて力比べになっていった。
力を込め合う亜美と楓。
亜美は自慢のパワーで押し込めると考えていたが、思いの外楓が粘っていて押せない。
楓も亜美のパワーは想像以上で、必死に力を込めている。
いくら力を入れても押せないので、焦る亜美。
すると楓は亜美の様子を見透かした様で、引き付けるとボディに膝蹴りを打ち込んでいった。
ドス、
亜美:うっ、
楓の膝蹴りを喰らって息が詰まる亜美。
楓は動きが止まった亜美の側頭部にハイキックを打っていった。
バキッ、
鈍い音が鳴ると膝を着いて踞る亜美。
楓は体勢が低くなった亜美の頭にもう1発キックを打っていくが、亜美は読んでいて楓の脚を掴まえると引き倒した。
バァン、
背中を鉄板に打ち付けて仰向けに倒れる楓。
亜美は楓の上に乗ろうとするが、楓も抵抗して許さない。
グランド状態で縺れ合う両者だが、亜美が楓を押さえつけるとマウントポジションを奪った。
上からハンマーパンチを振り落とす亜美だが、楓もしたからガードポジションを固めると亜美のパンチを防いでいる。
楓は亜美の攻撃を最小限で防ぐと亜美の手を下から掴んで、両脚を亜美の体に巻きつけてひっくり返すと脱け出した。
素早く立ち上がる楓と亜美。
楓は得意の打撃で勝負しようとファイティングポーズをとると亜美もファイティングポーズをとった。
楓は打撃なら容易に勝てるといきなりハイキックを打っていくが、亜美は避けるとカウンターのパンチを打っていった。
バキィ、
顔面にヒットすると楓は仰け反って後退を余儀無くされている。
亜美:表では“ピッチャー”として有名だけど、“打撃”にも自信があるのよ。
亜美はそう言うと楓の顔面にパンチを連打していく。
バキ、バシィ、バキ、
ガードして守る楓だが、亜美の猛打に鼻血を吹き出した。
バシッ、
しかし、楓もミドルキックを亜美のボディに打ち返すと流れを止めている。
一旦距離をとる楓と亜美。
楓は予想外の亜美の打撃力に戸惑っている。
一方の亜美は手応えを掴んだのか前に出ると重いパンチを楓の顔面に打っていくが、楓はガードするとカウンターのパンチを亜美の顔面に打ち返した。
バキィ、
亜美:あうっ、
流石の打撃センスを見せる楓。
亜美も楓のパンチで呻き声をあげると鼻血を流している。
楓は距離を詰めると続けて得意のハイキックを亜美の側頭部に打っていった。
バキィ、
楓のハイキックを喰らって目を虚ろにさせる亜美。
やはり亜美は打撃で勝負をするのは分が悪かったようで、楓は自信を取り戻すと両肩を抱え込んで膝蹴りをボディに打ち込んでいった。
ボシュュ~~、
亜美:ああぁぁ~~、
楓の膝が亜美のボディに突き刺さると苦悶の表情を浮かべる亜美。
楓は疼くまって完全に動きが止まった亜美の背後に回り込むとハイキックで亜美の後頭部を蹴っていった。
バキィィ、
楓のハイキックがクリーンヒットすると亜美はうつ伏せに倒れた。
楓は檻の外のレフリーに話しかけた。
楓:この人もう意識無いわよ。
楓はそう言うと亜美の顔を持ち上げてレフリーに見せるとオーロラビジョンに失神して泡を吹き出す亜美の顔がアップで写し出された。
驚きの声があがる場内。
『カーンカーンカーン』
レフリーも亜美が失神しているのを確認して慌ててゴングを要請した。
流れを1度掴んでからは電光石火の決着劇に観客も驚いている。
『勝者:蒼野楓、よって第9回アルティメットバトルトロフィー優勝者は蒼野楓』
晴れてアルティメットバトルトロフィー女王を戴冠した楓は笑顔でトロフィーを受け取った。
楓が華やかなスポットライトを浴びる傍ら、黒服は亜美の罰ゲームの用意を進めている。
亜美は檻の天井から吊るされたロープで両手を縛られると下からも両足を固定させられている。
意識は取り戻した亜美だが、無防備な体勢に晒されている。
楓:さあ、罰ゲームの「人間サンドバックゲーム」を始めるわ。ボディが自慢らしいから私がキックを5発打って耐えられたらクリアよ。
楓のキックを5発もノーガードで受けなければならないので、亜美も緊張を隠せない。
レフリーは準備が出来たからと合図すると楓が1発目のキックをボディに打っていった。
バシィィ、
亜美:ううぅぅ、
腹筋を入れて耐えようとした亜美だが、楓のキックで叩かれて苦しそうな表情を浮かべている。
楓:あらら、軽く蹴ったんだけどね。ドンドン行くわよ。
楓はそう言うとさっきよりも強いキックを3発続けて打っていった。
バシィィィ、バシィィィ、バシィィィ、
亜美:ああああああぁぁぁぁ~~~~、
悲鳴をあげる亜美。
楓のキックを喰らったボディは青紫色に変色している。
楓:最後の1発、行くわよ。
楓は助走をとってアピールすると観客は盛り上がっている。恐怖で顔がひきつる亜美。
楓は走っていくと見事な飛び膝蹴りを亜美のボディに打ち込んでいった。
ボシュュュュ~~~~、
亜美:うげぇぇぇぇぇぇ~~~~~~、
亜美のボディに楓の飛び膝蹴りが食い込むと亜美は胃液の様な黄色い液体を吐き出して失神してしまった。
楓:野球で鍛えたっていう体も大した事無いわね。まあ、お客さんが楽しんでくれたから別にいいけど。
楓はそう言うとトロフィーを抱えて去っていった。
一方の亜美はロープが外れて解放されると力なく倒れた。失神しながらも悔し涙を流す亜美は担架で運ばれた。